税制改正:平成30年度まとめ
手元に今年度の税制改正の研修資料がやってきましたので、頭の整理を兼ねてブログに投稿します。
個人的に税制改正の論点で苦手なのが、「税制改正年度」と「適用時期」のズレ。
いや、実務で対応する際には当たり前のことなのですが、いわゆる税制改正本は税制改正年度でまとまっており、実際に調べる段階だと適用時期からアプローチすることの方が多いからです。(僕だけでなければいいのですが…)
そのため、最近は税制改正について、自分で整理整頓していくときは適用時期からもアプローチできるよう工夫している次第です。
税理士なら当たり前ですかね。すみません、まだまだ熟していないですね。
さて、さっそくいきましょう。
1. 平成30年度改正の柱挙げ
個人課税関係
①所得税基礎控除の引き上げ。48万円へ。
②所得税基礎控除の減額と消滅。合計所得金額2400万円超で減額開始、2500万円超で消滅。
③住民税基礎控除の減額と消滅。合計所得金額2400万円超で減額開始、2500万円超で消滅。
④給与所得控除の引き下げ。10万円DOWN。
⑤給与所得控除の上限設定の引き下げ。給与収入850万円でSTOP(195万円)
⑥上記⑤について、子育て世帯と介護世帯には措置あり。
⑦青色申告特別控除額の引き下げ。55万円へ。(10万円特別控除は変動なし)
⑧上記⑦に付随して、電子申告要件を満たせば、65万円維持OK。
⑨家内労働者の事業所得の計算上の必要経費について、55万円へ。
⑩配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の要件に変化。48万円以下、133万円以下などへ。
⑪公的年金等控除の引き下げ。10万円。
⑫公的年金等の収入が1000万円超で、上限195.5万円の控除上限設定。
資産課税関係
⑬非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予の特例設置。計画5年間と実行10年間。
⑭一般社団法人等スキームの規制。
⑮特定居住用宅地等の「家なき子」の要件見直し。
⑯貸付事業用宅地等の3年間要件。
⑰生産緑地法の改正を受けて、農地等の納税猶予の見直し。
法人課税関係(中小企業中心)
⑱所得拡大促進税制の見直し。基準年度廃止。継続雇用者給与等支給額要件は1.5%以上増加。15%税額控除。
⑲上記⑱の追加控除の要件。2.5%以上増加かつ、いずれか。教育訓練費10%増加、経営力向上計画の実行。
⑳固定資産税の特例の見直し。ゼロ課税。生産性向上特別措置法。
㉑交際費課税の特例制度の2年間延長。2020年3月まで。
㉒省エネ再エネ高度化投資促進税制。特別償却30%、特別控除7%(中小のみ)
㉓少額減価償却資産の特例制度の2年間延長。2020年3月まで。
㉔収益認識基準の導入に関して、法令の明確化。
土地、住宅関連
㉕居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算、繰越控除の2年間延長。
㉖特定居住用財産の譲渡損失の損益通算、繰越控除の2年間延長。
㉗不動産移転登記の登録免許税、不動産取得税の軽減。中小企業の組織再編時。
㉘固定資産税の負担調整措置。3年間継続延長。
㉙不動産取得税の税率特例、宅地評価土地の特例の延長。3年間。
㉚不動産売買契約書の印紙税。軽減措置の延長。2年間。
国際課税関係
㉛恒久的施設関連規定の見直し。支店PE、建設PE、代理人PE。
㉜外国人の出国後の相続税等の納税義務の見直し。
㉝タックスヘイブン対策税制の見直し。金融持株会社の経済活動基準の見直し。
㉞国際観光旅客税の創設。出国1回1000円。
2. 適用開始時期等で区分
個人課税関係(2020年の所得税から適用)
上記①~⑫のすべて
資産課税関係(2018年1月1日以後の相続贈与から適用)
上記⑬
資産課税関係(2018年4月1日以後の相続贈与から適用)
上記⑭(ただし、同日前設立の社団については、2021年4月1日以後の相続で適用)
上記⑮⑯
資産課税関係(都市農地の貸借の円滑化に関する法律の施行日以後)
上記⑰
法人課税関係(2018年4月1日から2021年3月31日までに開始する事業年度)
上記⑱⑲
法人課税関係(生産性向上特別措置法の施行日から2021年3月31日までに認定を受けて取得した)
上記⑳
法人課税関係(2020年3月31日まで)
上記㉑㉒㉓
3. 雑感
まず、所得税の基礎控除にメスが入ったこと。
これは基礎控除の概念が崩れたことを意味するかと。
課税の公平の土台でもあったはずなのに、そこまで社会は不公平ということか。
次に、所得税の10万円のアレコレ。
テクニカル過ぎます。確実に申告ソフトありきですね。時代を感じます。
ただし、社長さんへの柔軟なアドバイスは少し難しくなる印象。「ちょっと計算しますね」のちょっとが大きくなってしまった。
課税要件明確主義とはいったい…。
一般社団法人の節税(?)スキームについて、網が張られましたね。
時間の問題だったのですが、スキームが声高に喧伝されてる当時から「いつか課税される」と言われていました。
僕はクライアントに勧めることはありませんでした。もし勧めていたらと思うとゾッとします。
契約書上、損害賠償請求はされない仕様になっていると思いますが、信頼は確実に失います。
まあまだ特定一般社団法人等に該当させないなどの逃げ道はあるのかもしれませんが、使いにくいでしょうね。
また、小規模宅地等の課税価格特例についての見直しもありました。
いずれも租税回避的な活用を封じる方向です。ということは、租税回避的に活用していた人が結構いるということです。
上手い!と言うべきか。そこまでやるかと言うべきか。
法人課税関係は、給与UPと設備投資の促進を図っているとのこと。主税局課長補佐のセミナーより。
収益認識会計基準の絡みについては、勉強します。中小企業はあまり関係ないと思いますけども。