消費税軽減税率制度:困難な事情

あけましておめでとうございます。
本日が仕事始めです。
今年もよろしくお願いします。

さて、平成31年10月からの消費税軽減税率制度の導入につき、税額計算の特例がいくつか設けられています。

・売上税額の計算特例>10日間特例
・売上税額の計算特例>売上の卸小売特例
・売上税額の計算特例>50%特例 …A
・仕入税額の計算特例>仕入の卸小売特例
・仕入税額の計算特例>簡易課税制度の届出特例 …B

上記、Aについては、困難な事情があるときは、となっています。
次に、Bについては、その適用制限の除外規定として、著しく困難な事情があるときは、となっています。

「困難な事情」
「著しく困難な事情」
このふたつの意義と実務的な捉え方を考えたいと思います。

1. 50%特例:困難な事情

ここで僕がいう「50%特例」とは、売上計算特例の10日間特例または売上の卸小売特例の例外計算を指します。(改正法附則38④)

しかし、真面目な税理士さんであれば、この50%特例は使わないと思います。
困難な事情という前に、「主として軽減対象資産の譲渡等を行う…」とあるため、50%特例を利用すると不利になる可能性が高いからです。手間は格段に省けるでしょうけども。

効果が薄いということは、ここでいう「困難な事情」は本当に低いハードルになっているようです。僕の参加した研修では、その困難の度合いを問わないであろうということでした。
納税者有利に働く可能性が低いため、法律としても緩く設定していると思います。

次に説明する「著しく困難な事情があるとき」は、一筋縄ではいきません。

2. 簡易課税制度の届出特例の適用制限の除外:著しく困難な事情

先に簡易課税制度の届出特例~、あたりを見ておきましょう。

これは、
『基準期間課税売上高5,000万円以下である事業者は、課税仕入れを税率毎に区分することにつき困難な事情があるときは、平成31年10月1日から平成32年9月30日までの日の属する課税期間の末日までに簡易課税選択届出書を税務署長に提出し、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度を適用することができる』①

『消費税法37③に規定する、各簡易課税制度の適用除外規定の存在』②

『②に該当する場合であっても、平成31年10月01日から平成32年9月30日の属する課税期間の末日までの期間中において行った課税仕入れ等を税率毎に区分することにつき、著しく困難な事情があるときは、①の規定が適用される』③

の流れです。
この届出特例(①)は、事後選択を認めるという規定です。
税務業界としては、画期的な規定です。今までどれほどの人達が簡易課税と本則課税の有利不利計算に振り回されてきたか…。

この③の中に、「著しく困難な事情」が出てきます。

消費税の軽減税率制度に関する取扱通達24において、説明がありますが。

(著しく困難な事情があるときの意義)
24 改正法附則第40条第2項《課税仕入れ等を適用税率別に区分することが困難な中小事業者に対する経過措置》に規定する「著しく困難な事情があるとき」とは、同項に規定する適用対象期間中に国内において行った課税仕入れを税率の異なるごとに区分して合計することが著しく困難である場合をいうのであるから、例えば、当該適用対象期間中に軽減税率の対象となる課税仕入れとそれ以外の課税仕入れがある場合であっても、当該適用対象期間の軽減税率の対象となる課税仕入れがそれ以外の課税仕入れの回数に比し、著しく少ない場合などは、帳簿、保存書類等からこれらの課税仕入れを容易に区分することができるのであるから、他に考慮すべき事情があるときを除き、「著しく困難な事情があるとき」に該当しない。
(注) 建設業、不動産業その他の主として軽減税率の対象となる課税仕入れを行う事業者に該当しない事業者が、当該事業者の事務所、営業所等に自動販売機を設置した場合の清涼飲料水の仕入れや、福利厚生、贈答用として菓子等を仕入れた場合は、著しく困難な事情に当たらない。

3. 実務

結論からいえば、簡易課税届出の適用除外に該当する場合に、届出の事後選択が認められることは少ないと思います。
次に、事後選択が認められる「著しく困難な事情がある」場合において、実際にこの事後選択で大きな税額の有利不利が見込めるかというと、さらに少ない事例になると思います。そもそも、簡易課税制度が利用できる事業者においては、設備投資の額が大きくならない零細企業が多いです。また、軽減対象資産の課税仕入れがそれなりにある業種ということになれば、更に設備投資の可能性は下がりますので。

事後選択については、適用除外事業者に該当しなければ、それなりに考慮する場面は出てきそうです。この事後選択特例を適用する場合の簡易課税制度選択届出書の提出は、平成31年7月1日以降となるようです。

著しく困難な事情があるかないか、これに頭を悩ませる場面は少ないと思いたいですね。

ご意見、ご指導等ありましたら、コメントをお願いします。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。

    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください