借地権①:各税法で異なる借地権の定義

「借地権課税」という税務上の厄介な代物。
課税論理だけが喧伝されている気がしてならないのですが、
それでも付き合っていかなければならず、整頓したいと思います。

今回は、借地権の定義をまとめます。

1. 相続税法上の借地権

(範囲)
借地借家法に定義する借地権をいう
つまり「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」となります。
(注:旧借地法では、「建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう」となります。)

(根拠)
①相続税法では、借地権について用語の意義が規定されていない。
②唯一、相続税法上で出現する「借地権」は、相続税法23条の地上権の定義付けの中の除外部分。
③財産評価基本通達では、9(土地の上に存する権利の評価上の区分)の(5)において示されている。
④上記③においても、定義付けはされていない
⑤そのため、借地借家法2条一号の借地権の定義、および、借地法1条の借地権の定義を借用概念として用いている。

上記①~⑤の流れで、相続税法上の借地権の範囲を把握します。

2. 所得税法上の借地権

(範囲)
「建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権」とされています。

(根拠)
所得税法施行令79条①において、定義されています。
これは、所得税法33条の資産の譲渡に含めるものについての、政令の定めです。

法令の条文上で借地権の範囲が定義されているため、意義が明確です。
相続税法の借地権の範囲より、「構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権」の部分が広くなります。

3. 法人税法上の借地権

(範囲)
「地上権又は土地の賃借権」法人税法施行令137条
「建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」法人税法施行令138条
「地上権若しくは土地の賃借権又はこれらの権利に係る土地の転借に係る権利」法人税法施行令139条

(根拠)
具体的な定義のある条文は、上記のとおりです。
それぞれの条項が、何についての条項かを見ていきます。

施行令137条
土地の使用に伴う対価についての所得の計算、です。
相当地代の収受がある場合は、権利金の認定課税を行わないという内容です。

施行令138条
借地権の設定等により地価が著しく低下する場合の土地等の帳簿価額の一部の損金算入、です。
所得税法の借地権と同範囲。

施行令139条
更新料を支払った場合の借地権等の帳簿価額の一部の損金算入等、です。
転借権に係る部分を除き、施行令137条と同範囲。

4. まとめ

対象の範囲の広さは、
相続税法上の借地権の範囲 < 所得税法上の借地権の範囲 < 法人税法上の借地権の範囲
となります。

特に、法人税法上の借地権の範囲は広く、施行令137条では、所有目的の資産が何であるかを問わず、
地上権、土地の賃借権を借地権として定義しています。

しかし、一般的に実務で直面するのは、やはり「建物の所有を目的とする土地の賃借権」です。
これは、土地の所有者 ≠ 建物の所有者 の場合に、地上権登記がなくても発生するものなので。

この「建物の所有を目的とする土地の賃借権」は、
相続税でも、所得税でも、法人税でも、借地権の範囲に含まれるため、包括して考える必要があります。
つまるところ、建物所有を目的とする土地賃貸借契約があれば、実務的には借地権を意識することになります。

しかし、借地権の設定と「認定課税」が直結するかと言えば、そうではないところが難しいところなのです。
借地権の認定課税という言葉は、正しいのか?
実際に認定課税は行われているのか?
行われていれば、その課税根拠は?
行われていなければ、その課税されない根拠は?

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