借地権②:権利金の認定課税 その1
本題に入ります。
表題を「権利金の認定課税」としました。
借地権の認定課税、ではなく、権利金の認定課税が正しいと考えています。
1. 借地権の設定に係る権利金の取引慣行
いわゆる権利金の認定課税というものの概略を見ていきます。
①地主と借地人の間で、土地の賃貸借契約が締結される。
②借地借家法等により、地主は土地の利用、売買について制約を受ける。所有権はあるのに。
③この制約部分が、経済的価値の減少と考えられる。
④地主としてはお金を収受することで納得する。
⑤借地人の方も、お金を支払うことで土地の利用開始ができるなら、と納得する。
⑥この相反する二者間の歩み寄りの接点が、権利金の収受・支払という取引慣行を生む。
ここまでが、権利金の取引慣行についての流れです。
2. 権利金の認定課税(理屈)
⑦権利金の取引慣行がある地域で、権利金のやり取りのない、又は、少額の権利金のやり取りで借地権の設定が行われる。
⑧つまり、無償又は低廉で借地権の設定が行われたことになる。
⑨これは、地主から見れば、無償又は低額での資産の譲渡に該当。
⑩これは、借地人から見れば、無償又は低額での資産の譲受に該当。
となります。
ここまでくれば、あとは⑨⑩に法人税法22条2項を当てはめて、地主又は借地人に益金を認識する流れになります。
(もちろん、地主側は同額の寄附金等を認識します。)
3. 権利金の認定課税(実務)
では、権利金の認定課税は実際に行われているのでしょうか?
自分がこの業界に入ってからは、一度も見たことがありません。聞いたこともありません。
しかし、理屈はたくさん目にしました。書籍でも、研修でも。
理屈は間違っていないはずです。
自分も理屈の流れには納得します。
では何故実務上、課税案件を目にしないのでしょうか?
その答えも、理屈の中にあるのではないかと考えています。
つまりこうです。
上記⑦において、「権利金の取引慣行のある地域で」とあります。
これは、法人税法施行令137からの読み取りです。これが曲者です。
借地権の取引慣行のある地域、ではなく。
権利金を収受する取引慣行のある地域、です。
前者は、財産評価基本通達27のただし書きより。
後者は、法人税法施行令137条の前提条件のひとつ。
これが、混同されているのではないかと。