通達の前文(まえぶん)
研修に参加しました。
頭に残ったものを書き留めておきます。
税務通達のお話でした。
馬券訴訟判決を受けての通達改正についての講師の見解を併せて。
1. 前文
通達には前文があるそうです。
その前文には、通達の利用基準のようなものも記載されているとのこと。そこに、こんな趣旨の文章があるようです。
『機械的平板的な通達の取扱いは禁ずる。弾力的に取り扱うべし。』
目から鱗が落ちました。
まさか、通達がこんなことを言っているなんて。
真逆の印象を抱いてました。通達とは画一的で、ある種形式的な処理のためにあるのだと。
基本的に、通達など誰でもアクセスできる情報は記載しないのですが、今回は別です。みんな通達の本文しか見ていないでしょうから、参考までに引用したいと思います。
2. 法人税通達・前文
『…(略)…規定の内容についても、個々の事案に妥当する弾力的運用を期するため、一義的な規定の仕方ができないようなケースについては、「~のような」、「たとえば」等の表現によって具体的な事項や事例を例示するにとどめ、また、「相当部分」、「おおむね…%」等の表現を用い機械的平板的な処理にならないよう配意した。
したがって、この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい。』
いやしくも、ですよ。
これが税務職員へのお達しですからね。
ぼくらにあっては、当然のことであります。
3. 所得税・前文
『所得税基本通達を別冊のとおり定めるとともに、所得税に関する既往の取扱通達を別紙のとおり改正または廃止したから、通達する。
この所得税基本通達の制定に当たっては、従来の所得税に関する通達について全面的に検討を行ない、これを整備統合する一方、その内容面においては、法令の単純な解説的留意規定はできるだけ設けないこととするなど通達を簡素化するとともに、なるべく画一的な基準を設けることを避け、個々の事案に妥当する弾力的運用を期することとした。したがって、この通達の具体的な適用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るよう努められたい。』
法人税ほどではないですが、趣旨は同じですね。
4. 馬券通達の改正
もともと、馬券訴訟の前は、競馬の馬券の払戻金に係る所得については一時所得とする旨だけ、通達に記載されていました。
馬券訴訟の後に、注意書きで雑所得に該当するものもある旨、追加されました。
(※内容の異なる馬券訴訟が2件あり、そのいずれをも反映したため、改正が2回入っています。より複雑になってしまいました。)
講師は、「こんな難解で適用の稀な事例に対応するために、通達を複雑化する必要はない。そもそも前文にあるように解釈すればいいだけだ。」とおっしゃってました。
前文を読んでみると、なるほどとなります。
以上、紹介と書き留めでした。